善きサマリア人の法

ある日、近所のスーパーへ買い物へ出かける途中、路上で倒れている人を発見した。
近寄ってみると意識がなく、呼吸も止まってしまっている。
とっさに町内会の防災訓練で習った応急救護を思い出し、人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行ってみた。
しかし、応急救護の甲斐なく、その人が再び息を吹き返すことはなかった。

後日、その人の遺族から郵便が届いた。
中を見てみると「あなたの応急救護が不適切だったために家族が亡くなりました。慰謝料として○〇万円を請求します。」
さらに、警察がやってきて「あなたの応急救護により人が亡くなりました。逮捕します。」

もし、本当にこのようなことがあったとしたら、誰もが倒れている人を発見しても無視してしまうことでしょう。
せっかく習った応急救護も、ミスを恐れるあまりに実行する人はいなくなってしまいます。

そこで、誰かを助けるために無償で善意の行動を取った場合には、仮に悪い結果になったとしてもその責任を免ずる、というものが「善きサマリア人の法」です。
諸外国ではすでに法制化されており、日本でも法律化すべきかどうか議論されているところです。

ちなみに、サマリアとはパレスチナのヨルダン川西岸地区一帯を指し、聖書の中に、おいはぎに遭った被害者を救ったサマリア人のように行動すべきという教えがその由来とされています。
なお、日本では未だ法律に定められていませんが、民法上の緊急事務管理や、刑法上の緊急避難などにより、責任を負わねばならないことはまずないものと思われます。

現在、救急車の一般的な到着時間は6~7分と言われています。
一方で、カーラーの救命曲線によれば、心停止後3分での死亡率は50%、6~7分後にはほぼ絶望的とされています。
一刻も早い応急救護が必要であり、そのためには万が一の結果を恐れることなく速やかな措置が行われることが求められています。