天ぷら火災

平成20年10月の法改正により、新たに販売されるガスコンロには安全装置の設置が義務付けられました。

天ぷらは、一般的に180℃前後の温度にて調理します。
しかしながら、火をつけたまま放置するとさらに温度は上昇し、350℃以上に達すると発火します。 180℃から350℃に達するには10分と掛からないとするデータもあります。

法改正により設置される安全装置の一つとして過熱防止装置があり、これは、鍋底の温度が250℃以上になると自動的にガスを遮断し消火するというものです。
この装置により天ぷら火災を未然に防ぐことができますが、当然のことながら古い機種にはセンサーがついていないものもありますし、 2口以上の火口があるコンロの場合、全ての火口にセンサーが付けられていないものもあります。

なお、最近増加しつつある事故事例として、「少ない油で天ぷらを揚げる」、「形状が特殊な鍋での調理」というものがあります。
昨今の健康志向を受け、少量の油で揚げ物をする調理法がありますが、油量が少なければその分、油の温度上昇は著しく、 センサーが探知して消火する前に危険温度域に達してしまうことがあります。
また、鍋の中心部にくぼみがあるなど、特殊な形状の鍋の場合には、センサーが鍋底に触れないために正確な温度を測れないということもあります。
コンロの取扱説明書に従い、正しい方法で調理をすることが重要です。

それでは、万が一、天ぷら油が発火した場合にはどうすればよいか、推奨されている方法を見てみたいと思います。

1.水は厳禁

一般的な消火方法では、水を掛けることにより温度を下げて消火をします。
しかしながら、発火している油は350℃以上の高温となっているため、そこへ水を注ぐと急激に水が沸騰し、水蒸気爆発を起こします。 爆発が起こると炎のついた油が周囲に撒き散らされ、より深刻な火災へと発展してしまいます。
天ぷら火災を水で消火しようとすることは非常に危険です。
なお、大量の野菜等を投入して温度を下げる方法もありますが、野菜には大量の水分が含まれていますので、 やはり水蒸気爆発を起こす危険性があります。

2.マヨネーズは疑問

一時期、「天ぷら火災はマヨネーズで消える」という話が出回ったことがあります。
たしかにマヨネーズの主成分は油ですので、水のときのような水蒸気爆発は起こりにくく、また、温度を下げることができれば消火することができるかもしれません。
とは言え、十分に温度を下げることのできる量のマヨネーズを投入せねばならず、かつ、投入時に油が周囲に飛び散ればさらに火災は拡大してしまいます。 あくまで温度を下げることにより消火をするだけのことで、そもそもマヨネーズの成分に消火能力があるわけではありません。
消火できる可能性は否定しませんが、決して消火法として推奨するものではなく、さらに深刻な状況になる危険性も含んでいます。

3.投棄は危険

パニックになり窓から屋外に投棄してしまった事例が過去にありましたが、言うまでもなく危険です。
投棄時に火傷を負ったり、火のついた油が延焼を招くなど、さらなる災害に発展する危険性が非常に高く、 絶対に行うべきではありません。

4.消火布は応急措置

不燃性素材で作られた消火用布や水で濡らしたシーツ・タオルなどで鍋を密閉し、窒息消火をする方法もあります。
しかし、あくまで応急措置であり、実験では密閉され火が消えていたはずの状態から再び発火した事例も報告されています。
また、消火できたと安心し布を外してみたところ、油が高温のままであったため、再び発火することもあります。 布を掛けようとして油をこぼして延焼したり、火傷を負ったケースもあります。
天ぷら火災においては絶対的な消火方法ではないことを認識しておく必要があります。

5.やはり消火器

シンプル過ぎる結論ですが、やはり消火器に勝るものはありません。
大型の消火器でなくとも、最近はエアゾールタイプの消火具もあります。
ホームセンターなど様々な場所で数千円程度で購入できるものですので、台所には常備しておくことが望ましいでしょう。

なお、消火器を使用する際にも注意点があります。

(1) 周囲に飛び散ることがある
消火剤を勢いよく噴霧しますので、その圧力で油が飛び散ることがあります。
一般的な消火器で3~5mほどの放射能力がありますので、はじめは若干遠い距離から噴霧を始めることも 危険を回避するのに効果的です。

(2) 一回に全て使い切る
一度は火が消えたとしても、温度が十分に下がっていない等の理由により再び火が着くこともあります。
消火剤が全てなくなるまで噴霧するようにします。

(3) 不向きな消火器もある
消火器には様々な種類があり、中には天ぷら火災には不向きなものもあります。
消火能力が高いとされているのが「強化液消火器」です。
液体のため冷却効果が高く、また、粉末のように飛び散らず遠くから消火作業が行えますが、粉末消火器であっても 正しく用いれば十分な消火能力は備えています。
一方、エアゾール式消火具の中でも「ハロン」を用いた消火具には冷却効果がなく、天ぷら火災には推奨されていません。エアゾール式の中でも「強化液」タイプのものが推奨されています。

(4) 消火作業の限界は炎が天井に達するまで
消火器を用いたからと言って、全ての火災を完全に消火できるわけではありません。
天井まで炎が回るほどの火災の場合には、消防への通報と速やかな避難を最優先にします。

いずれにしても、全ての天ぷら火災は人災と言っても過言ではありません。調理をする人の不注意から起きています。
「急な来客で」、「電話が鳴ったので」、「子供が泣いたので」・・・理由は様々ですが、ガスコンロから離れる際には一度火を止めるのが大原則であり、 天ぷら火災を起こさないための最高の対策です。
なお、最近は、レンジの換気フード内に設置する住宅用自動消火装置も販売されており、多少高価ではありますが 「つい、うっかり・・・」の際には非常に効果的です。